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Gynecologic Oncology today 創刊号

​第60回日本癌治療学会学術集会:婦人科がんトピックス

SSY3-2-1 Phase 3 EMPOWER-Cervical 1/GOG-3016/ENGOT-cx9 trial of cemiplimab in recurrent or metastatic cervical cancer: Subgroup analysis of patients enrolled in Japan

再発または転移性子宮頸がんにおいてcemiplimabを検討した第Ⅲ相EMPOWER-Cervical 1/GOG-3016/ENGOT-cx9試験:日本人症例のサブグループ解析

長谷川 幸清 先生(埼玉医科大学国際医療センター 婦人科腫瘍科)

更新日:2022年12月20日

 プラチナ製剤ベースの化学療法後に進行した再発または転移性の子宮頸がんに対し、cemiplimab単独と化学療法を比較検討した第Ⅲ相EMPOWER-Cervical 1試験で、日本人集団における有効性と安全性、薬物動態(PK)を解析した結果、新たな安全性シグナルは検出されず、cemiplimabは抗腫瘍効果を有することが確認された。
 

 本試験の対象は、プラチナ製剤を含む化学療法を2ライン以上受けた後に進行した再発または転移性の子宮頸がん患者608例で、cemiplimab 350mgを3週毎に静脈内投与する群(304例)か、治験担当医師の選択による化学療法(ペメトレキセド、ゲムシタビン、トポテカン、イリノテカン、ビノレルビン)を施行する群(304例)に無作為に割り付けられた。被験者はPD-L1発現の有無に関わらず組み入れられており、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体の治療歴を有する患者は除外された。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性、QoLで、探索的評価項目としてPK、薬力学(PD)、免疫原性、バイオマーカーを検討した。
 

 日本人集団は56例(9.2%)で、29例がcemiplimab群、27例が化学療法群に割り付けられた。日本人集団は全体集団と比べ全身状態がより良好で(日本人集団:ECOG PS 0が73.2%、1が26.8%、全体集団:0が46.5%、1が53.5%)、扁平上皮がんの割合が高い傾向があった(日本人集団:扁平上皮がん94.6%、腺がん5.4%、腺扁平上皮がん0%、全体集団:扁平上皮がん77.8%、腺がん19.1%、腺扁平上皮がん3.1%)。また前治療が2ライン以上の患者がより多かった(日本人集団:1ライン42.9%、2ライン以上57.1%、全体集団:1ライン56.9%、2ライン以上42.6%)。日本人集団の年齢中央値は57.0歳、転移性92.9%であった。
 

 日本人集団における観察期間中央値は13.6カ月で、全体集団(18.2カ月)より約5カ月短かった。OSのハザード比(HR)は0.86(95% CI: 0.43 – 1.68)、OS中央値はcemiplimab群8.4カ月(95% CI: 7.0 – NE)、化学療法群9.4カ月(95% CI: 5.4 – 14.9)だった(全体集団:HR 0.69、95% CI: 0.56 – 0.84、片側p=0.00011、OS中央値 cemiplimab群12.0カ月、化学療法群8.5カ月)。PFSのHRは0.90(95% CI: 0.50 – 1.61)、PFS中央値はcemiplimab群4.0カ月、化学療法群3.7カ月だった(全体集団:HR 0.75、95% CI: 0.63 – 0.89、片側p=0.00048、PFS中央値 cemiplimab群2.8カ月、化学療法群2.9カ月)。ORRはcemiplimab群17.2%、化学療法群7.4%だった(全体集団:cemiplimab群16.4%、化学療法群6.3%)。
 

 薬剤への曝露期間中央値はcemiplimab群18.1カ月、化学療法群11.0カ月だった(全体集団:cemiplimab群15.2カ月、化学療法群10.1カ月)。有害事象の発現率は全gradeがcemiplimab群79.3%、化学療法群100%、grade3~5がcemiplimab群37.9%、化学療法群66.7% で、全体集団での割合と同程度であり、新たな安全性シグナルは観察されなかった。
 

 日本人集団の定常状態におけるcemiplimabの血中濃度は、最低血中濃度(Ctrough)平均78.4mg/Lから最高血中濃度(Cmax)平均211mg/Lの幅で変動していた。日本人集団のcemiplimabの平均曝露量は全体集団と比べてCtroughは20%、Cmaxは13%高かったが、これらの差は全体集団の患者間の変動幅に入っていた。

監修コメント

監修 上田 豊 先生のコメント

 プラチナ製剤ベースの化学療法後に進行した再発または転移性の子宮頸がんに対するcemiplimab単独と化学療法を比較検討した第Ⅲ相臨床試験の日本人集団における有効性と安全性、薬物動態の解析結果が示された。海外で有効性・安全性が示された治療方法であっても、少数とは言え、そこに含まれた日本人のデータを確認できるのは有意義である。

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