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Gynecologic Oncology today 創刊号

​第60回日本癌治療学会学術集会:婦人科がんトピックス

OWS26-5 本邦での子宮頸癌に対する低侵襲手術の取り組みと今後について

小林 栄仁 先生(大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科学教室)

更新日:2022年12月20日

 子宮頸がんに対する腹腔鏡下広汎子宮全摘術(LRH)の後方視的研究JGOG1081sの付随研究JGOG1081sA1において手術手技の詳細と予後との関連が検証され、リンパ節の回収経路が腹腔、施設の経験症例20例未満が再発のリスク因子であり、広汎子宮全摘術の術式やスキルが予後に影響する可能性があることが報告された。

JGOG1801sA1では、再収集したカルテ情報に基づく術式の詳細および観察期間を延長した生存率等を検討するチャートレビューと、再発症例と非再発症例のビデオを比較するビデオレビューが行われた。
 

 全体の術後5年での無再発生存率(RFS)は86.9%(95%CI: 81.8-90.6)、全生存率(OS)は93.7%(95%CI: 87.5-96.8)であった。同様に腫瘍径2cm未満、2cm以上ではそれぞれRFS 91.5%(95%CI: 84.2-95.5)、82.7%(95%CI: 74.8-88.3)、OS 96.5%(95%CI: 74.8-99.4)、91.0%(95%CI: 82.8-95.4)であった。これをJCOG 0806A試験やLACC試験のMinimally Invasive Surgeryと比較するとRFSはやや低い傾向があるが、OSは同程度であり、術後の治療によってOSが担保されていると推察された。多変量解析の結果、リンパ節の回収経路が腹腔(p=0.034、HR2.88、95%CI: 1.09-7.63)、施設の経験症例数20例未満(p=0.025、HR2.49、95%CI: 1.12-5.53)が有意なリスク因子であった。
 

 ビデオレビュー(ケースコントロール研究)は手術手技の評価法としてObjective Structured Assessment of Technical Skill(OSATS)を用い、Birkmeyer氏らの手技と合併症に関する論文を参考にした1),2)。評価者は内視鏡と婦人科腫瘍専門医の資格を有する臨床経験16年以上の医師とし、チェックリスト9項目について術式の評価および6項目のスキルの5段階評価を1症例につき3人の評価者によるレビューを行い、Zスコアを用いて標準化した。対象は再発症例23例、非再発症例23例であり、患者背景を調整して解析を行った。
 

 広汎子宮全摘術の術式は全例がtypeⅢと自己申告していたが、レビューでは約半数がtypeⅡまたはtypeⅠと判断され、ロジスティック回帰分析でtypeⅡは再発と有意に関連していた(p=0.023、OR10.87、95%CI: 1.39-85.01)。また、基靭帯に関する操作も再発の有意な因子として検出され(p=0.049、OR0.36、95%CI: 0.13-1.00)、スキルの低い症例は再発する可能性が高い傾向が示唆された。

1)Martin JA, et al. Br J Surg. 1997; 84(2): 273-8.
2)Birkmeyer JD, et al. N Engl J Med. 2013; 369(15): 1434-42.

監修コメント

監修 上田 豊 先生のコメント

 子宮頸がんに対する腹腔鏡下広汎子宮全摘術(LRH)については、海外の臨床試験の結果から、現在は慎重な対応が求められている。今回報告されたJGOG1081sA1研究の結果において、広汎子宮全摘術の術式やスキルが予後に影響する可能性が示唆された。詳細な診療情報とビデオレビューによって導き出された結果であり、今後のLRHの普及における留意点と考えるべきであろう。

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