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Gynecologic Oncology today 創刊号

​第60回日本癌治療学会学術集会:婦人科がんトピックス

OWS26-3 再発高リスク子宮体がんに対するロボット手術の試みと課題

小林 裕明 先生(鹿児島大学医学部 産科婦人科)

更新日:2022年12月20日

 傍大動脈リンパ節郭清を伴う子宮全摘術において、ダヴィンチXiシステムを用い、デュアルドッキング手術が可能であることが報告された。ポートは一直線上に配置され、術痕は4つとなる。これまでに15例に同法が施行され、14例に重大な術中および術後合併症はなく、全例に再発は認められていない。

 

 同施設では、2017年に本邦初のデュアルドッキング子宮体がん手術を施行した。1例目はダヴィンチSiに準じた8つのポートを設置し、大網切除・PAN郭清後に閉創のうえ再ドッキングして骨盤リンパ節郭清・子宮摘出を行ったが皮下気腫が生じた。
 

 そこで、ダヴィンチXiシステムを用いれば、ロールアウトしなくともブームの向きを180度変えて再ドッキングすることで上下腹部手術は一直線のポート配置で可能であると考え、上腹部および下腹部手術を試みた。その際、PAN郭清時は左手2本/右手1本で行い、アームのドッキングを外してブームを180度回転した後の下腹部手術時は、右手2本/左手1本で手術することとした。ポート配置の一直線の高さは大動脈分岐部が最良であり、術前CTで上前腸骨棘からの距離を測定しておくが、ほとんどの症例でカメラは臍から挿入でき、外観上4つのポート痕で済んだ。

 

 現在までに子宮体がん15例に同法を施行した。その内訳は、単純子宮全摘術13例、準広汎子宮全摘術2例、コンソール時間中央値391分、出血量中央値80mL、術後入院日数中央値9日、術中合併症は右腎動脈損傷1例、咽頭浮腫1例、術後合併症は一時的尿管膣瘻(自然閉鎖した)1例、腹壁瘢痕ヘルニア1例、骨盤内感染3例、乳び腹水1例、症候性リンパ嚢胞1例、下肢リンパ浮腫3例、術後化学療法あり11例、なし4例であり、全例で再発は認められていない(観察期間中央値48カ月)。

 

 同法のコツや留意点は、1)小林氏が提唱してきた“3つのC”、すなわちcameraによる拡大視野、アームを適切な操作位置に戻すclutch work、良いtensionが効いた術野を維持するcounter tractionなどを原則とし、2)PAN郭清では、ポート配置レベルを大動脈分岐部に合わせること、3)牽引糸や小ガーゼを用いて良好な術野を確保すること、が有用である。加えて、虚脱した下大静脈とその直接分岐、腰動静脈や腎動脈の損傷に留意する必要がある。
 

 小林氏は、常に3つの鉗子で手術を完結し、アシストポートからの助手鉗子を使わないsolo-surgeryが安全とスムーズな手術に重要であるが、手術室スタッフ全体のteam-surgeryが両立しないと、安全性の高い手術は担保されないと述べた。

COI:先行5例はインテュイティブサージカル合同会社の受託研究
 

監修コメント

監修 上田 豊 先生のコメント

 子宮体がんに対するロボット手術も今後進んでいくものと思われる。今回、再発高リスク子宮体がんに対するダヴィンチXiシステムを用いた傍大動脈リンパ節郭清を伴う子宮全摘術の良好な成績が示された。手術操作ごとにいくつか注意すべき点や工夫すべき点はあるものの、十分安全に行えることが報告されており、今後の普及が期待される。

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