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婦人科腫瘍研究会 インタビュー

関西臨床腫瘍研究会 (KCOG)

伊藤 公彦 先生(独立行政法人 労働者健康安全機構 関西労災病院 産婦人科 部長/副院長)

更新日:2023年6月22日

●“患者のためになる質の高い臨床研究”の実践を目指して発足

 関西臨床腫瘍研究会(KCOG)は、「本当に患者さんのためになる質の高い臨床研究を行いたい」という志を持った医師とメディカルスタッフが参加する多施設共同臨床研究グループである。発足した1994年当時は、呼吸器外科医が中心であったが、1998年に婦人科医、放射線科医、統計処理部門が参加し、2003年にNPO法人となり、現在に至る。

 

●関西臨床腫瘍研究会であるが、参加施設は関東から九州まで広範囲に亘る

 現在のKCOGの会員の所属施設は、関西を中心に東は東京女子医科大学から西は久留米大学や大分大学までと広範囲に亘っている。発足当初は関西の施設が主体であったが、今や拡大関西版臨床研究グループともいえる。

 特別な参加資格は設けておらず、看護師や薬剤師など、医師でなくても冒頭に挙げた理念に賛同する者であって年会費を納めれば入会可能であり、退会も自由である。

また、“施設会員”という制度も設けている。こちらも年会費を納めれば入会でき、施設当たりの参加人数に制限はない。その他、企業の参加も可能であるが、こちらは一社当たり3名までの参加者数制限がある。NPO法人としての役員は理事7名、監事2名、正会員18名、呼吸器グループおよび婦人科グループの分科会代表がそれぞれ1名という構成で、各種委員については運営18名、プロトコール審査8名、倫理3名、安全性3名、監査1名、利益相反管理3名、そして臨床統計顧問が1名という構成になっている。

 

●年2回の総会と2カ月ごとの婦人科グループ分科会を開催

 研究の中心は臨床第Ⅱ相試験と後方視的研究や観察研究である。年に2回、夏と冬に総会を開催している。総会では特別講演と会計報告等を行った後、呼吸器グループと婦人科グループがそれぞれの分科会を開催する。婦人科グループは総会以外にも2カ月に1回の頻度で分科会を開催し、進行中の臨床研究および新規テーマについてのディスカッションを行っている。新型コロナウイルス感染症まん延の影響によりWeb開催としていたが、昨年(2022年)からは現地参加も交えたハイブリッド型に移行した。分科会には毎回20~30名の研究熱心な会員が参加している。

 第Ⅲ相試験は必要症例数の収集力あるいは資金力の点でKCOG単独での実施は困難であり、行う場合はJGOGやJCOGとのコラボレーションが必要となるのが実情である。

また、他の地域の研究グループとインターグループを形成し、婦人科関連の学会開催時期に合わせて年に2回、それぞれの研究グループの幹部のみ参加する会合の席に参加している。症例登録における協力、興味を抱いた臨床研究への参加など、相互にサポートできる体制の構築を図っている。

 

●若手医師から研究テーマを募り論文化まで経験してもらう成功体験獲得型の

 育成に注力

 大きな学医局などの医育機関に所属する若手医師であれば、研究テーマが与えられ

、比較的臨床研究を行いやすい環境にあるが、それ以外の場合は臨床研究に対するモチベーションを高めることが困難な場合が多い。その点に関して、KCOGでは多施設が参加している強みを活かし、迅速な症例収集を基盤とした研究のスピード化と質の向上を武器に、若手医師に論文化まで速やかに完遂する成功体験をさせる方針で育成している。指導者は、自主性の醸成に主眼を置き、研究テーマの方向性の提示にとどめている。定期的な分科会でのディスカッションや、メーリングリストを活用したプロトコール提案などが、テーマの採用あるいは症例収集の可否に関する判断を迅速にしており、これも若手医師が臨床研究を実際に行い成功体験を得る上で大いに役立っている。

 

●ゲノム研究も交えたトランスレーショナルリサーチを目指す

 臨床研究グループではあるものの、KCOGでは基礎研究も重視しており、ゲノム研究も含めたトランスレーショナルリサーチを進めていきたいと考えている。また、臨床研究グループとしてのリーダーの世代交代の時期を迎えている。もともと、年功序列なし、派閥なしがモットーのグループであり、若手であっても自由に発言できるという点に重きを置いてきたことから円滑な移行が可能と考えられる。KCOGが若手医師にとっての全国規模、世界規模の臨床研究に参加する上での登竜門となることを期待しており、その実現に向けての歩みを着実に進めている。

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