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婦人科腫瘍研究会 インタビュー

大阪婦人科腫瘍研究会(GOGO)

上田 豊先生(大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科学 講師)

更新日:2023年6月22日

●卵巣癌に対するパクリタキセルの本邦承認をきっかけに発足

 大阪婦人科腫瘍研究会(GOGO)発足のきっかけとなったのは、1997年7月の卵巣癌に対するパクリタキセルの薬事承認である。パクリタキセル承認以前の卵巣癌薬物治療の中心はプラチナ製剤であり、当時は有効性の飛躍的向上が示されていたシスプラチンであったが、再発頻度あるいは不応による予後不良例が少なからずおり、新たな治療薬の登場が待たれていた。そのような背景からパクリタキセルの承認には大きな期待が寄せられたが、医師の間で“米国や欧州における臨床用量や投与スケジュールを、体型や組織型等の患者背景因子が異なると予想される日本人患者にそのまま適用してよいものか、同等の成績が得られるのか”が議論となった。議論は、この課題を臨床研究によって明らかにするという結論に達した。必要な症例を短期間に収集できる状況にあったことから、大阪大学医学部附属病院と関連病院で臨床研究を実行することになった。このときの研究グループが現在のGOGOである。最初の臨床研究である日本人卵巣癌患者に対するパクリタキセルとカルボプラチン併用療法(TC療法)の有効性に関する検討(GOGO-OV 1)が開始されたのは1999年であった。

 

●研究会の組織概要と活動実績
 GOGO発足から今日に至る経過の中で、大阪大学関連病院自体の整理に伴い参加施設は徐々に絞られ、現在では一部を除き大半が大阪府内に存在している。参加についての制限はなく、大阪大学関連病院に所属していれば参加可能であり、それ以外の施設あるいは他の臨床研究グループに所属している場合でも参加は可能である。関連病院以外の医師の参加についてはGOGO内部で検討は行うものの、基本姿勢としては積極的な参加を歓迎している。
 研究会の正式な定期活動は年2回(1~2月と7~8月に開催)のミーティングとなるが、母体が大阪大学医学部附属病院とその関連病院のため、通常の医局活動と兼ねる場合もある。なお、年2回のミーティングでは進行中の臨床研究の症例登録も含めた進捗状況の確認、タイミングが合えば中間解析結果の評価、課題がある場合は取るべき対策の検討、提案された新たな研究テーマについての審議などを行う。臨床研究のテーマに新規薬剤が関係する場合は、開発に関わったメーカーへセミナーの開催を依頼し、研究会メンバーの勉強の機会としている。
 GOGOが行った臨床研究のうち最も話題となったのは、最初の臨床研究であるGOGO-OV 1であろう。Principal Investigatorであった榎本隆之先生は、2003年のASCOにおいて、当時は珍しかった婦人科領域の日本人プレゼンターとして発表を行った。

 

●新たな臨床研究のテーマ
 現在2本の臨床研究の準備が進められている。1本は高齢婦人科癌患者を対象とした高齢者機能評価・フレイル評価である。患者の高齢化という現状を踏まえ、治療強度調整の有効性および安全性を明らかにしようというものである。もう1本は、腹腔鏡下手術が婦人科癌領域でも主流となる中、至適周術期管理については不明点も多く、感染症対策なども含め、後方視的研究によってこれを明らかにしようというものである。いずれの臨床研究についても、2023年2月に開催されたGOGOミーティングがkick offの場となった。

●関連病院所属の若手医師の提案採用を積極的に推進
 GOGOに限ったことではないが、臨床研究に積極的に取り組もうという若手医師が以前ほど多くはないという点が課題に挙げられる。
 その原因は明確ではないが、以前は臨床研究の必要性が今よりもはるかに高かったことは間違いない。当時、臨床課題に対する答えは自分で見つけるしかなく、今のように診療ガイドラインを閲覧すれば容易に手に入る状況ではなかった。そのためGOGOでは、“ガイドラインは新たな発見のためのminimumな知識を示したものであり、決してゴールではない”ということを若手医師に意識して伝えている。
 また、GOGOの活動歴を振り返ると、発足以来、全ての臨床研究は大阪大学医学部附属病院
がテーマを提示、研究計画を立案し、関連病院に患者登録を依頼するという形で進められてきた。この状況が、関連病院に所属する若手医師の臨床研究に対する意欲の芽を摘んできた可能性は否定できない。これが臨床研究から若手医師が遠ざかる真の原因か否かは別としても、GOGOでは関連病院の中堅および若手医師に臨床研究テーマの考案を依頼し、実現性の高低を問わない自由な研究構想の提案と議論の機会を定期的に設けている。上述した2023年度の新規研究テーマは、いずれも関連病院の若手医師から提案されたものであり、GOGO始まって以来、初めてとなる関連病院発の臨床研究となった。これらが成功を収めることで、関連病院の若手医師が臨床研究の実行可能性を前向きに捉え、積極的な取り組みへと繋がることが期待される。

●地域研究グループとしての足固めとともに中央、世界への活動拡大を目指す
 上述のように、大阪大学医学部附属病院およびその関連病院で構成されるGOGOは必要症例数を速やかに集められるという点で優れている。一方で、臨床研究がGOGO内部で完結してしまいがちであり、他の臨床研究グループ、特に、JGOGやJCOGといった中央の研究グループとの交流の停滞につながっている。一時、他地域の研究グループ(インターグループ)との交流も盛んであったが、その継承がうまく行えなかった。今後は中央の研究グループにおけるGOGOとしての発言の場を獲得し、自分たちの研究のアイデアを全国レベルで展開できる人材の育成が必要と考えている。また、GOGOとしての足元を固めることも重要である。現在進行中の臨床研究、これから開始する臨床研究で成果を上げ、それを基盤に活動域を全国へ広げ、さらには世界への拡大も期待される。

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